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この絵本、カラオケが駄目な人には、ちょっとシンドイかもしれない。なんたって、全編がカラオケなのだ。もう、それがすべて、他にはない。だからこそ、カラオケ好きにはたまらない絵本なんです。読み終わったらすぐにでも、いちもくさんにカラオケボックスへ走りたくなります。 ♪鳴っている。 ♪歌っている。 ♪波のエコーが沁みてくる。 画面いっぱいにどーんと描かれたタイは、大漁節を歌ってて、よく見ると、その瞳はイっちゃってる。そのイっちゃい方は、まぎれもなく、自己完結的な至福を味わう、カラオケの世界そのものを表現しているといっていい。 マイクをせがんだ、ごろはちは「カミナリゴロちゃん」をほえまくり、たこのはっつぁんは乱入し、舟木くんは舟をこぐわ、まてこさんは持ち歌の「港町十三番地」を歌うわ、波間のさかなたちはパシャパシャ拍手大喝さいするわで、こりゃーもう、ノリノリの宴会以外のなにものでもない。 で、この絵本を読ませると子どもにどういう影響があるか、って。そんなやぼなことはいいっこなし。なんだかものすごい喜びのエネルギーが、絵本中に満ち満ちているんだから。 絵本読むのも、カラオケ行くのも、つまるところエンターテインメントなんだし、結局、だからこそ楽しいんだもの。(甲木善久)
産経新聞 1996/08/02
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