|
子どもの本の中で一番活躍する大人といえば、やはりお母さん。どこの国の本も、お母さんに比べてしまうと、お父さんの影が薄いのは否めません。そこで今回は、「お父さんががんばっている本」を取り上げてみましょう。 まずは古典的な、頼れるお父さん。「極北の犬トヨン」に登湯する猟帥グランは、自分の妻子だけでなく、孤児になった隣人の子ども、手伝いの人達、多数の猟犬やトナカイに至る大家族を、猟の腕一本で支えています。たまには愚かな失敗をして、妻のアンナの知恵に救われる時もありますが、基本的には「強いお父さん」。今世紀初めのシべリアを舞台に、厳しい自然の中に生きる家族の父親像が鮮やかに描かれます。 次に登場するのは、がらりと変わって、サラリーマンの「仕事人間パパ」。「うちへ帰れなくなったパパ」のパパは、仕事に夢中になっているうちにママと子ども達の引越し先がわからなくなってしまいました。不思議な連中の冒険に巻き込まれながら、なんとかうちへ帰ろうとするうちに、家族との絆を考え直すことになります。「パパって何の役に立つの?」という子どもの問いに考え込んでしまう姿は、今の日本のお父さんにそっくりかも。 続いて、一歩先を行く(?)お父さんが二人登場。「両手のなかの海」の父さんは、エリートサラリーマンだったのが、失業して失綜してしまいます。そして四年後、再び現れた時には、「女装する男」に変身していました。ちょっと突飛な設定と思われるかもしれませんが、「自分のやりたい事を見つけた」と生き生きと語る父さんは、なかなか魅力的。初め反発していた息子との間に、共感が育っていく過程が感動的です。 一方、「ジャムおじゃま」のパパは、専業主夫。洗ったり掃いたり植えたり煮たり、お昼寝させたりキスしたり、完壁な主夫ぶり(よく見ると、お皿を洗濯バサミで干したりしていますが)。しかも、「うちのママはすごいんだぞ」と、勤めに出ているママを機嫌良く自慢します。そんなパパが、ある日ジャム作りにとりつかれ、家中がジャムだらけに…。「ジャムはもううんざり」「でもパパにはそんなこと言えない」と気を遣う子ども達の姿が、笑えます。 たまには、がんばるお父さんの本を、親子で読んでみませんか?お父さん自身が、お母さんと子ども達に読んで聞かせてくれたら、最高ですね。(上村令)徳間書店 子どもの本だより 1999/01,02 |
|