学校ともだち

長野まゆみ著


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 硬質で透明だけど、ふわっとして、はかなげ。長野まゆみの描く世界には、ちょうど女子高生ばかりで演じられる「銀河鉄道の夜」みたいな趣がある。そんなナガノワールドが、また奥行きを増した。『学校ともだち』(光文社)は、ちよっぴりこわいファンタジー。
 いつのどことも知れない学校6年B組で、当番の生徒によってつけられたクラス日誌、というスタイルが、まず楽しい。さまざまな出来事から考えを深めるトィとノッブを始め、わがままな学級委員のチハヤ、やや粗暴なノンノン、ひよわなチロら5人の少年たちの日々が、季節を追って繰りひろげられる。そんな彼らをオヅ先生が見守る。
 一見たんたんとした少年たちの日々のドラマたけど、さりげない記述から、彼らの世界がある危機を迎えていることがうかがえる。紫外線の増大、外出禁止、新しい選別の制度。そう、これはわたしたちの未来と地続きのファンタジーなのだ。こうしている間も、じわじわとオゾンホールは広がっている。(芹沢清実)
朝日新聞ヤングアダルト招待席 92.09.20

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