現代文学で遊ぶ本


JICC出版局


           
         
         
         
         
         
         
     
 文学というのは面白いのである。偉そうにみえるけど、マンガと同じなのである。 マンガはつまらないという人もいるけど、それはマンガの楽しみ方を知らないからで、文学なんてダサイと思っている人がいれば、それも楽しみ方を知らないからなのだ。マンガだって文学だって面白いはず。でもその面白さというのは、文学史や研究書や評論を読んでも、ちょいとわからない。そこでまあ別冊宝島の『現代文学で遊ぶ本』なんてのが意外と役に立つのではないかと思う。
 これは研究者や詩人や作家やフリーライターといったいろんな人たちが「おれはこう読む」という感じで、恥も外聞も、遠慮もてらいもなく、考えるところをズバリ書いていて、まことにすがすがしい。
 たとえば「井上ひさしから『言葉遊び』を取ると何が残るか?」「山田詠美のワンパターンは恐ろしい!」といったエッセイがずらりと並んでおり、どれも個人的名思いこみが強く、あくが強く、ときどき「そりゃないよ」といいたくなるようなものもある。たとえば冒頭の対談で中年のお三方が吉本ばななをいじめて喜んでいるが、ばななのファンなら大いに反論すべし!
 良くも悪くも刺激的な一冊で、気の弱い方や遊び感覚の欠如している方には特に勧めたい。
 さあ、あなたは読みますか?(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1989/02/26