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社会が変わろうとするとき新しい権利が生まれる。「先住権」って、聞いたことがあるだろうか? 自然と共に生活している人々のところへ、別の強力な文化をもった人々があらわれ、自分たちの言葉や習慣をおしつけ、民族の誇りを踏みつける。地球上のあちこちで起きたそういう歴史への反省から生まれた権利だ。 北海道新聞社会部編『銀のしずく』(北海道新聞社、1700円)は、日本の先住民であるアイヌ民族の〈いま〉を追いながら、地球の〈明日〉につながる大きなテーマをみつめた本。 ここに登場する青年たちは、民族差別をなくすにとどまらず、さらに未来を見ている。高校合格まで自分がアイヌと知らされなかった貝沢くんは、「自分の中の奪われてきたものを取り返したい」と民族に向き合う。アイヌ語を習う鹿田さんは、「アイヌって自然に対する優しい目、祈りの気持ちがある。アイヌ語の夢見たい。それくらいになりたい」とあこがれる。 自然と共に生きる先住民の伝統文化の感性が、今むしろ新鮮に感じられる時代。アイヌの「先住権」の保障を求める動きは、お互いの違いを認め会った上で共に生きていこう、という新しい社会のあり方をめざすものだ。 それにしても、「日本は単一民族国家だから、みんな同じがいいんだ」という考えがウソだと知ると、なんかスッキリしませんか?(芹沢清実)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席1991/11/03
テキストファイル化 妹尾良子
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