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”ギル”は盗むという意味で、”ギッた”はその過去形だ。 かつて街は「せわし気に行き交う大人達(たち)の所有物で、呆然(ぼうぜん)と目的のないままに漂うヤンにぶつかってきては、叱咤(しった)した」。 だが、やンが”ギル”ことを知ってから街は一変した。大人達の姿は消え、物達が輝き、手をさしのべるようになった。そのうちやンはギッターズという名の万引きグループを作る。ヤンを取りまく様々な青年たち――造反をたくらむ副リーダー、ボクサーくずれのリョウ、右翼グループからはじきだされた自称テロリストのタルヤ、”ギル”ことにかけては天才的な腕と勘を持つトモジ……。 ヤンは自分の道を進む。仲間の復讐(ふくしゅう)や警察も脅威だが、えたいの知れない巨大な影のような存在の方がおそろしい。しかし、武装すればするほど、恐怖はつのっていく。 川村毅の『ギッターズ』(新潮社・1,500円)は、暴力にいろどられた、うすら寒くやりきれない小説だが、異様に鮮烈な印象を残す。若く鬱屈(うっくつ)した暗いエネルギーの軌跡を、一瞬に封じ込めたような、危険な作品とでもいったらいいだろうか。(金原瑞人)
朝日新聞ヤングアダルト招待席 93.4.1 1
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