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小学6年生のセイくんのお話。 体が大人になっていく過程と初恋を2大柱として、学校生活や友だち、ちょっとだけ家族が絡んできます。 セイくんが好きになった女の子ナオちゃんは中学2年生で、それを知ったときは最初、その歳の差(小学生と中学生じゃ天と地ほどちがうと感じたことを思い出した)にあきらめようとするんですが、好きなもんは好きと開き直ります。 同時進行で、体が大人になっていくことにセイくんは非常に戸惑うのですが、わたしはただただ「男の子もたいへんなんやなぁ」と思うばかり。 こんなにずばずば男の体について書いた小説はいままで読んだことがありません。 セイくんは、思ったことがすぐ顔に出るし、いらんことをすぐべらべらしゃべってしまう。 でもその自分の気持ちに正直なところが妙にわたしを惹きつけます。 またナオちゃんが非常にさっぱりした子で、「なれなれしくせんといて」「あんたには主体性いうもんがないんか」などとぽんぽんものを言います。 それが非常に小気味よい。 この「主体性」ということばの意味をセイくんに教えるくだりで、わたしがナオちゃんに惹かれるのは、こういうふうに自分をはっきり持っているところだと分かりました。 父親に「きつい」と言われるような女の子に一目惚れするという設定が、また好ましいと思います。 そしてこのナオちゃんの父親、ナオキさんがいい味を出しています。セイくんはじつはナオキさんとの方が仲が良かったりしますが、ナオキさんは子どもだからという境目をつくらず(かといって子どもにおもねるわけでもなく)、セイくんを一番若い友だちと位置づけていて、2人はなんだかいい関係を築きます。 ラスト、何がどうこうなるわけでもないけれど、さっぱりとした読後感を味わいました。(太田なお)
メールマガジン「あかとらな本たち」009 1998/10/06
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