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コミックは、ずいぶん色々なことを知らないうちに教えてくれる。だから小学生でも、大人の男の股間のモッコリが何を意味するかなんて事は、漠然と判ってしまう。しかしその本当の意味が理解できるまでは、それは単なるギャグの一種にしか過ぎないのだが。 主人公の少年、セイは小学六年生。おチンチンの先から白い液が出て、それで汚れたパンツを母親に見つかって、その話を聞かされた父親がセイの部屋に来たところから物語が始まる。父親はこの手の話が苦手だから、なかなか要領を得ない。セイが判ったのは、それは「大事な大事な素」で、大人になるシルシだということ。仲良しの友だちに話すと、「発情期ィ! ギャォッ!」ってからかわれる。でも興味深々。突然大きくなって皮が剥けたりヒリヒリしたり、エッチな夢を見て白い液が出たり。自分の意思とは関係なく変化するおチンチンにセイは戸惑いいらだつ。そしてそのセイが、初めて出会った中学二年生の少女に恋をする。ドラクエやトルネコなどの、テレビゲームのキャラクターやアイテムが、子ども同士の会話の中に頻繁に登場する。それは子どもたちにとっての最も理解しやすい共通言語でもある。ドラクエ少年たちの性の目覚めと初恋体験が、じつにこまやかに生き生きと描かれ、その鮮やかさには感動的させられる。多彩な登場人物の個性と軽妙な会話のやり取りもまた楽しい。(野上暁)
産経新聞、1996年3月8日
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