グリーンマン わがままなクロードが森で見つけた幸福

ゲイル・E・ヘイリー作
あしの あき訳 ほるぷ出版 2002

           
         
         
         
         
         
         
    
 これは54ページの「あくまっぱらい」を描いたのと同じく、ヘイリーの作品です。
 グリーンマン……というのはイギリスの伝説、というか、妖精たちの一人です。なんというか、一種の森の守り神みたいなものよ。でもこの絵本出でてくるグリーンマンは、甘やかされた大地主の息子クロードで、わがまま、横柄、見栄っぱりの遊び人でした。ところが森の泉で水浴びしているすきに、服と馬をとられてしまったことから魔がさしたのか神さまのおみちびきか、彼は何気なくつたの葉っぱで身を包み、洞窟暮らしをする生活に、はまってしまったのです。クロードは自分を慕ってくれる動物たちに優しくするのが楽しくなり、毎日の健康な暮らしのおかげで精神も筋肉もマトモになっていきました。森のなかで苦しんでいる動物を助け、迷子になった子どもを送ってやり、気づいた時にはクロードは立派なグリーンマンになってた、というわけです。
 冬になるとクロードは雪のなかを村に出かけ、村の人たちがグリーンマンのために出しておいてくれた食べ物を食べました。この村の人たちは自分たちも貧しいのに、そうやって動物やグリーンマンにも食べ物を分けてたんだよね。もちろんそうされることでグリーンマンは生きのび、結局は村人たちにその利益は還元されてくるわけだけども___。
 町の中や家々の通りに、おカネを持ってる人間以外の生き物、犬や猫や浮浪者が幸福に生きている場所は幸福な場所です。他人に親切にする人々のいる場所なら、その人たち自身も他人からやさしくしてもらえるでしょうからね------。
 さて、いまの日本にいくつ"幸福な町・村・通り"があるでしょうか?(赤木かん子 『絵本・子どもの本 総解説第5版』)
テキストファイル化和澤順子