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森忠明は、デビュー以来、四半世紀以上、一貫して主人公の少年の名前を「森忠明」にしている作家。時代設定も本人の子供時代とほぼ一致する。なら自伝的なのかといえば、そうでもあるようだし、そうでもないようでもある。そこがこの書き手の魅力のひとつになっている。つまり、特定の子ども(子ども時代の作者自身)に起こった出来事と、フィクションの境目があいまいなため(もちろん、それを仕掛けているのは作者ですが)、日常のリアリティでも、フィクションのそれでもない、奇妙な位置で、私たちは「森忠明」少年にまつわる話を読むこととなります。 そのあいまいさが嫌いな読者にとって、森忠明はつまらないでしょうし、好きな人には、おいしい果実。おそらく、この作家は、「子ども時代」(少年時代?)を信じていて、今も所持していて、もちろん経験レベルでいえばそれはあくまで森忠明個人のものに過ぎないのですが、それはすべての子どもたちに通じるなにかを持っていると考えていると思います。だから、わざわざ別の名前を少年に付ける必要はない、と。 「グリーン・アイズ」は、「森忠明」くんが、彼を可愛がってくれている、お隣りの川島のおばちゃんから貰った革性の日記を、字がきたないぼくが書いたらもったいないと思っていたけど、書かないのは申し訳ないと思い直して、暮れも押しつまった12月21日から付け始める、その日記の中身が、この本、という設定。 すでにもう、設定からいきなり、森ワールドです。(ひこ・田中)
メールマガジン児童文学評論1998/02/07
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