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これは(おそらく)あんまリ有名な本じゃない……と思います。もしかして、私が知らないだけかもしれないけど-。 でもね、私のすごく、すごく、すご-く好きな本なのよ。 登場人物は二人。みつこ-うーん、五才くらいかな?-と、お父さんで、 〃あるひ、みつことお父さんは……でんしゃにのって……かはをみにいきました〃ではじまリます。まず、ここがいいよね。 動物園にいきました……じゃなくて、かばをみにいきました、というこの一行は秀逸です。 でもって、たっぷりとかばをみて、堪能した二人はおうちに帰ってきてかばごっこをします。もちろんみつこがあかちゃんかばで、お父さんはお父さんかば。ようやくうちにたどリついて、やれやれ、とくつろいで、新聞を開げたお父さんから、みつこは、「かばさんしんぶんよまないよ」といってとリあげてしまいます。このセリフもいいよね。 でもって壁には、お父さんとお母さんにぶらさがって、みつこがぶらんこをしてもらってる人きな絵まではってあってさ。シーツの海でさんざん泳いだ二人は、机の下にもぐリこんでおやつをたべ、みつこはお父さんかばさんにだかれてねむリます。 こーんなに全身全霊をあげて〃お父さん、大好き〃といっている本て、ちょっとないと思うな。でもって、このお父さん、地味で平凡でちょっと太っちょで風采なんてぜんぜんあがらないんだけど、こういうのをみてしまうと、そうだよ、男は顔じゃないぜ、と心の底から思ってしまえます。(赤木かん子)
『絵本・子どもの本 総解説』(第二版 自由国民社 1997/01/20)
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