かっぱうたろう

おの りえん:文 かじやまとしお:絵
福音館書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 このごろは森や沼がめっきり減り、森や水辺に住むという河童(かっぱ)や子鬼のうわさも、さっぱり聞かなくなりました。これはあの小さな者たちが、おかしな客になる四つのお話です。
 村はずれの沼が、ある日突然干上がって、かっぱたちは黒雲に乗って遠くの沼へ。乗り遅れたうたろうは、木の葉や沼で頭のお皿や背中の甲羅(こうら)、足の水かきをかくして逃げ、山の一軒家に住むおじいさんおばあさんに助けられます。三人?は仲良く暮らすのですが、夜になると「見んなよ」と障子をぴしゃりとしめて眠るうたろうが、いつ見破られるかとハラハラしてしまう「かっぱうたろう」。
 猫の黒白のしまとおみけ夫婦の赤ん坊きじんこの耳の奥に住みついて、悪さをするかんの虫を追い出してやろうと、おじいさんが話すお話の中のお話「かんの虫の出世話」に、かんの虫だけでなく、読者も思わず引き込まれてしまう「かんのむし」など、小さな不思議な命と人間のふれあいが温かく描かれています。
 昔話風の語り口は読んであげるのにもぴったりです。(和)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化山地寿恵