カラー版西洋美術史


高橋秀爾監修

美術出版社 1990


           
         
         
         
         
         
         
     
 今回は『カラー版西洋美術史』からはじめよう。美術の手頃な入門書が欲しいなと思っている人には絶対お勧めの一冊。原始美術から現代までの美術の流れを過不足なくまとめてあるし、本文一八四ページ全てがカラー印刷で、図版三〇九点というのがうれしい。それに参考文献のリストがいい。約二百冊があがっているんだけど、いわゆるオーソドックスな本から、『神々は死なず・ルネサンス美術における異教神』『庭のイングランド』『建築の世紀末』といった、一見美術史からはみだしそうな本までが網羅してある。
 しかし美術といえば、いつも気になることがある。たとえば、ゴッホの「ひまわり」が五八億円で売れた。「なんだ、こりゃ」と首をかしげた人に、ずばり『美の値段』(池田満寿夫著・光文社・七九六円)を勧めたい。美術品の芸術的価値と商品価値とが一致しない場合が多いのはなぜかという疑問に答えた本で、内容は具体的でわかりやすく、そのうえ著者の美にかける情熱があちこちに顔をだしていて、これがまた魅力的だ。
 しかし、さらにこだわってみたい人には、若林直樹の『アート・ゲームス・・現代美術を探偵する』(洋泉社・一六〇〇円)を勧めたい。
 でも「芸術的価値」っていったいなんなのさ、と問いかけたのがこの評論集だ。印象派とともに生まれた美術市場を、画商と近代美術館の関係などから細かくさぐりながら、現代の美意識がいかにメディアによって操作され、演出されてきたかを、鋭くついた作品。読み応えあり!(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席90/07/08