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中学生の自殺が新聞に掲載されると、次々に連鎖反応が起こった。教室でのいじめ、暴力、成績不振、理由はいろいろあげられていた。しかし、何故、若者が死を選ぶのだろう。 小林真も中学二年生で睡眠薬自殺を図った。 「おめでとうございます、抽選にあたりました!」死んだぼくの魂は、前世の記憶を無くしたまま自殺した小林真の体にホームステイする事になった。前世で犯した過ちの大きさを自覚すれば、ホームステイは終了する。期限は一年。 というわけで、ぼくの魂は真の死を悲しんでいる家族の前で生き返った。一見穏やかな家族だが、父親は利己的、母親は不倫、兄は弟に嫌みばかり言う意地悪男だと、ガイド役の天使が説明してくれた。ああ、うんざりする生活が待っているのだ。 しかし、徐々に事情が変わってきた。父が本心を打ち明けてくれ、母も兄も真(ぼく)に手をさしのべてくれた。クラスの友達だってそうだ。真(ぼく)への対応が変化してきたのだ。 家族やクラスの仲間の本当の姿が見えてきたぼくは、「この家族に本物の真を返したい」「真が生き返って欲しい」と願った。ぼくの魂を真から抜くことが真を生かす道だと天使が言った。それにはぼくの前世の罪を思い出さなければならない。ぼくは必死に自分の犯した罪を思い出そうとした。時間がせまる…。 目標を見失い、周りの人間関係もギクシャクしている若者たち。学校にも存在意義が見出せない。「…みんなで色まみれになって生きていこう。たとえそれが何のためかわからなくても」という真の言葉のように、「厳しいけれど逃げてはいけない。人はみんないろんな面を持って周りと関わり合って生きているのだよ」と作者は強いメッセージを投げかけている。 テーマが重くて暗いのにも関わらす、コメディタッチで軽く読める。最後、気をもみながらもホッと出来る結末に拍手。(池村 奈津子)
読書会てつぼう:発行 1999/01/28
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