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言葉の持つ力−語られる物語と、書かれた文章の持つ力−。この大きさを、私たちは今の生活の中で、どれほど実感しているでしょうか。主人公のダマスカスに住む少年は、無二の親友サリームじいさんから、その素晴らしさを教えてもらいます。 シリアという国が抱えた多くの矛盾や、苛酷(かこく)な社会状況の中で、「ぼく」は日いちにちと成長を遂げていきます。「ぼく」は、ちょうど中学・高校生の年齢に当たるのですが、学校に行くことは、途中であきらめなくてはなりません。けれども、彼は学校で学ぶ以上のことを体得していきます。真実を見据えることと、それを伝えることです。「ぼく」とともに生きる家族や周りの人々が、温かく、真の意味で賢く彼をはぐくんでいく様子は楽しく、グングン読み進んでゆけます。 サリームじいさんとともに、彼の師とも仲間ともなる新聞記者のハビーブさん。真実を語る彼らの後に続くものとして、「ぼく」と友だちのマハムート、そして「ぼく」の恋人のナディアは、ペンと紙だけを武器にして、非人道的な政府・社会に屈せず、闘い続けていきます。 特別な国の、ある時期の物語としてではなく、本物の恋愛をしたり、本当の友だちと大きく成長したい、と望んでいる思春期の人たちに、ぜひ手渡していきたい一冊です。アラブでは、星は希望を表すといいます。
(弥)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化清水真保 |
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