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作者は、養護学校の教師を、二十四年務めています。 この本は、障害者とのかかわりを共通のテーマにした、五つの短編からなりたっています。同じ偕成社の「ぼくのお姉さん」の続編といえましょう。前作どうよう障害者の問題を、「共に生きる」自分の問題として取りあげています。 それぞれ味のある短編ですが、表題にもなった「風にふかれて」は、放浪癖のあるタダシ少年とそれにふりまわされる周囲の大人が対照的に描かれています。春の風のように自由にとびまわるタダシの心情に共感しながら、本当に大切なものはなにかを考えさせられます。 また「さかえ荘物語」では、人の心にひそむエゴイズムを、ようしゃなくあばいてみせます。主人公「ぼく」が住むアパートに車いすの青年が引っ越してきたことでおこる事件が、リアルに語られます。「弱者」の青年が車を買うことで、うまくいき始めた人間関係がぎくしゃくしていく場面など、人の心の弱さ、醜さに身をつまされます。 だからこそ、弱い人間同士、障害があろうとなかろうと、限りある時間を、いたわりあって共に生きようではないか、という作者の熱い思いが伝わってきます。 重いテーマですが、詩的なリズムある文体と、臨場感ある描写で、一気に読ませます。 (け)=静岡子どもの本を読む会 |
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