憲法はどう生きてきたか

岩波書店



           
         
         
         
         
         
         
     
 このごろ、憲法が気になってしかたありません。ついに防衛費がGNP一パーセントを越えてしまったせいです。そんなところに『憲法はどう生きてきたか』という小冊子が出版されました。これは、戦争放棄をうたった第九条と表現の自由を保障した第二一条をめぐる戦後史を簡潔にまとめたものです。なかでも「第九条をつくった時の関心は、日本の安全をどうまもるかでなく、日本からアジア諸国の安全をどうまもるかであったのです」とか、「情報化社会にともなって……国が膨大な情報を独占的にもつようになったため、従来のように、ただ市民が表現をする自由をさまたげられないだけでは、かならずしも表現の自由が実現したことにはならないという事態がおこってきました」という指摘は重要です。
 また、憲法を見直してみたい人には、『日本憲法スピード・チェック』(受験研究社・四三〇円)がコンパクトで便利。むつかしい用語には解説がついているし、第九条のところでは、「(Q)自衛隊は、憲法にいう戦力ではないのでしょうか。(A)政府は、最小限の自衛力で、第九条違反ではないとしていますが、戦力にあたり憲法違反だとする意見も少なくありません」という適切な説明があり、非核三原則の解説もそえられています。中学生用に編集されたものですが、一般の読者にもお勧めの一冊。各章ごとの設問に挑戦するのも楽しいものです。(金原瑞人
朝日新聞 ヤングアダルト招待席