きえた13号室

ロバート・スウィンデルズ

斉藤健一訳 福武書店 1991

           
         
         
         
         
         
         
     
 教師引率の下、子供達は、海辺の町の古い屋敷に滞在する。屋敷には、夜中の十二時になるとドアに十三という番号が浮かび上がる部屋があり、生徒の一人エリーメイが夢遊病者のようにその部屋に出入りしているのを主人公フリスは目撃する。段々血色が失われるエリーメイ。彼女の首筋には咬み跡。ドラキュラ。友人達とともにフリスは、そのことを教師達に告げるが、信じてもらえない。だから、エリーメイを救うべく、彼女達はなぞの十三号室へ‥‥。
 ストーリーは全然違うが、「ひょっこりひょうたん島」を思い浮かべた。そこには博士、チャッピー、ダンプといった子供達と、ドン・ガバチョ、トラヒゲ、サンディ先生といった大人達のドラマが展開される。文庫化されたシナリオを改めて読んでみると、サンディ先生と子供達の関係がなかなかおもしろい。様々な事件が起こったとき、サンディ先生は、聖職教師として子供達を守るべく、幾つもの正論を述べるが、それはいつも紋切り型で、ほとんど役に立たない。仕方がないものだから子供達は、自ら事件解決に奔走する。だからといって、子供達はサンディ先生を代表とする大人達を軽蔑しているわけでもない。「しょうがないな」ってノリで付き合っている。それが見ていた子供としては痛快だったのね。
 この物語も同じノリで、子供達には痛快なんだろう。ただし、そのために、悪のシンボルとして、ドラキュラを安易に使っているのは、いただけない。だって、ドラキュラは恐怖ではあるけれど、悪じゃないもの。恐怖と悪は違うよ。(ひこ・田中 )
産経新聞91/07/27