“機関銃要塞”の少年たち
影との戦い
ニングル

           
         
         
         
         
         
         
    

 この三冊は、来年や再来年の子供たちだけでなく、五〇年後や八〇年後の子供たちに、ぜひとも読んでもらいたい児童文学として取り上げてみた。おそらく彼らは、様々な面で二〇世紀という時代のツケを払わされながら生きるのだろう。かつて何があったから、今こうなのか? 年表だけでそれは分からないけれど、文学を通してなら、この時代の実感の一部くらい伝わると思うのだ。『“機関銃要塞“―』では、戦争が強者の論理で成り立つことや、銃の存在によって要塞造りが始められるという戦時下の心理など、「戦争の世紀」の実感が、また『影との戦い』からは自我という強迫観念にどれほど私たちが支配されていたのかが、そして『ニングル』からは、二〇世紀後半に日本人が何をしてきたか、経済発展の名の下に自然や文化をどのように踏みにじってきたのかが、読み取れるはずである。ヒューマニズムや合理主義や進歩主義の功罪を取り混ぜて、この三冊を手渡したい。

毎日・子どもの本新刊紹2000年12月(21世紀の子供たちに受け継いでほしい本ベスト3)(甲木善久