霧のむこうのふしぎな町

柏葉幸子
講談社 1975

           
         
         
         
         
         
         
    
 柏葉幸子が『霧のむこうのふしぎな町』で新人賞をとり、デビューしたのが一九七五年……日本の児童文学の近代化というか、ニュ-ウエーブは、このあたりから始まリました。
 でも、ついこのあいだ、と思っていたのにもう二十年も前なのね。
 ということは、この本で育ったというか、その前を知らない世代が、はや図書館員になリ始めてる、ということになるわけよね。
 歴史というのは何でもそうですが、あとから来る者ほど大変です。なにせ知らなきゃならないことは、刻一刻、増えていくわけですからね。
 世代によっては、ふわふわワンピースを着た女の子が、ピエロの顔が柄になっている赤と白の水玉もようの傘という西洋アンティークを紹介状代わりに、山のなかのへンな村を訪ねて一夏を過ごす、という少女マンガを活字にしたような、国籍不明のこのファンタジーは、珍しくもなんともない、というよリごく当たり前だと思いますが、これが出てきた当時はちょっとしたセンセーションだったんです。
 ようやく新しい世代が出てきたか……ってカンジでね。
 お金や物には不自由しない新世代の子どもが主人公だったしね。
 柏葉さんはそのあともがんばってくれているので、一棚とはいかないまでも、半分くらいは埋まるでしょう。
 この本はもうやや古いですが、やはり印象が強かったとみえて、探している人がたくさんいます。一度は読んでおいてください。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ子どもの本案内』(リブリオ出版 1996/07)