きっとみんなよろこぶよ!


ピーター・スピアー
松川真弓・訳
評論社

           
         
         
         
         
         
         
     
 絵本『きっと みんな よろこぶよ!』を描いたスピアーは超Aクラスの絵本作家の一人である、とつねづね思っているのですが、どうも日本ではいまいち評価が低いというか、知名度が低いような気がします。
 なぜかっていうと、スピアーというのは子どもたちが心から解放されきって、百パーセント楽しんでる、いつもそういう至福の時を描く人なんですが、それは今の日本人が一番苦手なことだからじゃないか、と思う。たとえば前に、同じく評論社から出た『雨、あめ』は、二人の子どもが雨や風や水たまりできゃあきゃあいって遊ぶ話だった。今度の本だって留守番をしていた子どもたちが、そうだ、前から親たちがブツブツいってたぺンキ塗りをしてあげたら喜ぶよ、と思いついて家中、中も外も、屋根まで、それこそ夢中で楽しんでメチャクチャ塗りまくる話で、その子たちの満足しきった顔ったらないんだけれど、そういう良さって、自分が自由でないと理解できないことだものね。
 で、今この〃自分を解放する〃っていうのはすごく大事なことだと思う。だって大人も子どももどんどん押しつぶされているんだもの。だから、なくしかけた感覚を取り戻す手伝いをしてくれるこういう本は、ホントに貴重品だと思
う。年齢なんて関係ない。自分を解放したいと思う人はぜひ一度のぞいてみてちょーだいね。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1987/11/08