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「ちいちゃな ノブくんは おじいちゃんに つれられて きしゃに のって おやまの おじいちゃんのうちに きました」と物語は始まる。 ノブくんは、アンパンの入ったバスケットを持って、よく知っている裏山に登って行きました。 「ぼく おなかが すいちゃった アンパンたべよーっと」 食べようとすると、あれ? だれか見ているようです。太いしっぽ、きつねだったのです。 ノブくんと、きつねのかけっこが始まりました。どこまでも追いかけて……、きつねにアンパンをちぎってやりました。きつねは、こくんと食べました。 「おうち どこだろ」。夕暮れです。ノブくんは泣きそうになりました。コーンと、きつねがひと声鳴きました。と、どうでしょう。森の中の小さな原っぱいっぱいに咲いていたたんぽぽがゆれながら、一斉にあかりをともしたのです。 詩的な幻想の世界へと導かれる心温まる作品。夢がふくらむ作品がほかに三編。さし絵も親しみが持てます。 (野)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化塩野裕子
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