木を植えた男

ジヤン・ジオノ
寺岡襄・訳
あすなろ書房

           
         
         
         
         
         
         
     
 この『木を植えた男』の話、前にきいたことがあったんだ。フランスの荒れ果てた土地をたった一人で豊かな緑の大地に変えた男の話-。
 あまり知ってる人がいないと思うけど、カナダってアニメーションじゃ有名なとこなのよね。で、この絵を描いたカナダのフレデリック・バックは、『木を植えた男』のアニメ映画で、一九八七年のアカデミー短編映画賞をとってるの。それをなんかの記事でチラッとみたことがあってさ、その時、ああ、これ見たいな、と思ったんだ。ということを表紙を見たとたん思い出しました。ああ、これ、あれだって。
 だれもがすててった土地に毎日百粒ずつドングリを植えてく世捨て人のような男の話-でも三年で十万個植えて二万個芽を出して、その半分が育っとして一万本…とほうもないようでいて、その実とても着実に、彼は一九一○年から三十年以上、第一次大戦も第二次大戦も知らん顔して植え続けていって、ブナやカシワやカエデの広大な森をつくりあげ、一万人もの人が住む豊かな土地にしあげていくのよ。
 その魂の安らぎを得るためにどれだけの代償を支払わねばならないかを考えたら、単純にうらやんだりはできないけどね。映画の方も見たいんだけど、だれか持ってないかなア……。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1990/02/11