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久しぶりに、温かさのある美しい本に出合いました。 フランスのプロバンス地方の荒れ果てた山地に、豊かな緑をよみがえらせたエルゼア・ブフイエの半生を描いた物語絵本です。1987年のアカデミー賞短編映画賞を受けた作品をもとに、絵本として新しく出版されました。 「話は、何十年も昔にさかのぼる。あれはたしか1913年のこと。・・・」で始まり、家族を失った一人の男が思い立ったのは、不毛の土地に生命の種を植え付けることでした。 地面に鉄棒で穴を掘り、ドングリの種を一つひとつ埋め込んでいく。10万個の種が1万本のカシワの木に育ち、やがて木々は大きく育ち、自然界の営みによって水がわき、小川が流れ森が生まれます。ただひたすら木を植え続けた行為を通して、自然と人間のかかわりが見事に描かれています。 ページをめくっていくと、灰色の世界から少しずつ木が育って行くように少しずつ色が加わり、黄色や緑が増えていき、その繊細なタッチと色移りの鮮やかさは、素晴らしいものです。 今、世界的に地球環境について語られています。この本は、そうしたことについても問い掛けているように思います。絵本としてはページ数の多い47ページ。読みごたえ、見ごたえもあり、子供たちといっしょに、大人も楽しめます。
=静岡子どもの本を読む会
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