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これは『トムは真夜中の庭で』で有名なフイリッパ・ピアスの短編集ですが、〃トム〃よリずっと最近のもので、話も難しく、純文学にほとんど片足つっこんでる、といってもいいような本です。 ヴァージニア・ハミルトンの『マイゴーストアンクル』のように、逆に純文学好みで児童文学には縁のないお客さんたちには、橋渡しになってくれる本の一つでしょう。 どれがいいかはそれぞれ好みによると思いますが、そのなかの一つ〃ハレルさんのつくった洋だんす〃という短編は実に的確な、いまはやりのアダルト・チルドレンの物語だと思います。 そういうガイドをすれば、日頃子どもの本には縁のない人でも、アダルト・チルドレンに興味のある人は読んでくれるでしょう。 お父さんが死ぬ前につくった手づくりの洋だんすを、労働不能になって帰ってきた、もう中年の娘が怒り狂ってたたき壊しているのを隣の息子だけがきいている……というもので、モロ、アダルト・チルドレンの話だと思うのですが、訳者はそんなふうには思っていないだろうし、ピアス自身もどこまで意識して書いているのだろうかと思います。 ただし、きっちりわかっていなくても、描き出した物語はまちがってない、というのはさすが天才で、心のどこかでは人間はそういうふうに心や体が動くものだ、というのを確信しているのでしょう。 というわけでこの短編は、読者がつくようになったと思うんで、ガイドをよろしく!(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14) |
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