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書店の児童書コーナーに並んでいる絵本は、質の高い良いものがたくさん出版されています。絵本の魅力にとりつかれて、ファンになる大人も多いようです。 もちろん子どものために買い求める親もいるでしょう。子育ての中で出あった絵本のすばらしさに、夢中になったという人、孫のために買い求めた絵本が、結局おばあちゃんの愛読書になってしまったと話してくれた人もいます。 絵本の絵は大胆で力強い表現をする人、日常生活の機微をしっかり描きこむ人など多彩な人々が登場しています。それらの絵をどんな風に読もうと読み手の自由で、いろいろとイメージをふくらますことができます。手にとるたびに、違った発見や味わいがありそれも絵本の魅力の一つです。 以前、自宅に開いていた家庭文庫に来る三歳の女の子は「わたしのワンピース」が大好きで、来るたびに本をとりだしてにっこり笑い、いとおしげに抱きしめます。この子にとっては、はじめての大事な一冊だったのでしょう。 あわただしい学校生活に疲れてくると文庫にやってくる子どももいました。絵本を開くと、なつかしさやゆったりとした開放感に浸れて、心が和らぎ気持ちが落ちつくのだといいます。自分のペースで、すっぽりと絵本の世界に浸れるところがいいのでしょう。 一本のリンゴの木が一人の男の子に無償の愛をささげ通す「おおきな木」に感動し「しろいうさぎとくろいうさぎ」に、こんな素直でさわやかな絵本を知らなかったと、ぜひ結婚式の引き出物にしたいと熱っぽく語る若者。一冊の絵本にはさまざまな出あいがあります。 文字のない絵本「アンジュール」は、一匹の犬がしっ走する車の窓から捨てられます。突然、野良犬になって、長いさすらいの一日が、まっ白なページに鉛筆デッサンで描かれています。車を求めて走り、あきらめ、空に向かってほえ、訴えかける悲しみは、文章がないぶん、見る者の胸を打ち、真に迫ります。 こんな絵本に出あうと「絵本は子どもだけのもの」などという思いは、一掃されてしまいます。同じ社会に生きている大人と子どもが、楽しさ・よろこび・悲しみ・苦しみなどを共有できるのが絵本だと思います。 (静岡子どもの本を読む会 安本 静子) とりあげた本 「わたしのワンピース」 にしまきかやこ こぐま社 「おおきな木」 シェル・シルヴァスタイン 訳・ほんだきんいちろう 篠崎書林 「アンジュール」 ガブリエル・バンサン ブックローン出版 「しろいうさぎとくろいうさぎ」 ガース・ウイリアムズ 訳・まつおかきょうこ福音館書店
テキストファイル化日巻尚子
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