子どもに語るグリムの昔話

佐々梨代子/野村しげる:訳 こぐま社

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 「むかし、あるところに…」。さあ、グリム童話のはじまりです。昔話というと、きまりきった結末の子供っぽいものと、ばかにしてはいませんか。いえいえ、どうして。
人間や人生のさまざまな面を素朴に、鮮やかにみせてくれます。
 昔話は目で活字を黙読してもつまらない。耳で聞いて、聞き手の頭の中で初めて絵ができ、物語が動き出します。
 グリムの昔話は今までにもたくさん出ていますが、本書ほど「語り」に向いたものは珍しいでしょう。原文に忠実でありながら、日本語の語りやすい美しい文章になっています。声に出して読みやすく、聞いていると情景が生き生きと見えてきます。
 グリムを長年語ってきた訳者が、実際のお話会のなかで子供たちが特に喜んで聞いたものをえりすぐって集めた十二編、「がちょう番のむすめ」や「マリアの子」「鳴いてはねるひばり」など、大人も楽しめる話をおさめています。
 全部で六冊、六十四編のシリーズになる予定。読んであげる本ですが、自分で読むなら小学三年生くらいから。(弥)=静岡子どもの本を読む会
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