子どもに読んであげたい本

赤木かんこ
読売新聞1999/09/25

           
         
         
         
         
         
         
     
 さて今月のテ−マは歯。
 子どもの世界で歯の話というと、ひとつは永久歯に生え変わる…そしてもうひとつは虫歯でしよう。
 というわけでまずは「もうすぐぬけそうぐらぐらのは」(フレーべル館)。
 友だちはみんな歯が抜けたのにと悲しんでたケイティの歯も、ようやくぐらぐらになってきて喜んだのもつかの間、給食のデザートのプリンを食べた時にうつかり飲みこんでしまいます。
 もう歯の妖精が来ない、と大泣きするケイティに担任の先生はあわてず騒がず、粘土で歯を作ればというアイデアを出します。
 舌でぐらぐらの歯をつついていてもイラつかないし、ニセモノつてばれるよ、というケイティに、本当の歯と同じくらい気に入ってくれるわよ、と答えるこの先生ってすごいよ。そうして歯の妖精はお金と一緒に「なんてすてきなは!」という手紙までおいてってくれるんです。こんなことをする親もすてき!
 というのはアメリカでは抜けた歯をまくらの下に入れて眠ると歯の妖精が来てお金を置いてってくれるといういいつたえがあるからで、次の「はがぬけたらどうするの?」(フレーべル館)はある時、歯の妖精って何?とブラジル人の友人にきかれたことがきっかけで、作者がいろんな国の人たちにききまくってつくった絵本です。共通してるとことし
てないとこがあっておもしろいよ。
 最後は「むし歯のもんだい」(福音館書店)。
 子供の虫歯は親の責任……といわれ始めてから親の、特に女親のプレッシャーは大変なものですが、虫歯をつくらないために子どもは生きてるわけじゃない。子どもが虫歯になったら私が世間に悪い親だといわれる……なんて思われたら子どもはつらいよ。
 この本のすごいとこは、なんで虫歯になるのか、どうやってみがけばいいのか教えてくれた上で、でもきちんとみがいても、虫歯になる人もいるの…ということと、みがきかたはいってあるんだから小学校に入ったら虫歯は本人の責任、と親がどこまでしなければならないかの一線をきっちりと引いてくれている点です。中・高生にも一度は読んでもらったほうがいいよ。