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昨年刊行されて話題になった、同じ著者の『〈子ども〉のための哲学』(講談者現代新書)の中に、そのうち小学生にも読めるような本格的な哲学入門書を書きたいという抱負が語られていた。おそらくそれが、この本なのだろう。 自分で考えることの苦手な若者が増えている昨今である。生きること、勉強すること、友だちのことなど、子どもたちが発する素朴な疑問を手掛かりに、じつにユニークな哲学的な対話を、分かりやすく、しかもユーモラスに展開してみせて、最後まで楽しめる。たずねるのは中学二年生の「ぼく」。答えるのは、人間の言葉を話す不思議なネコの「ペネトレ」。 人間はなんのために生きているのか? それは、遊ぶためである。勉強だって、将来、より楽しく、より深く、人生を楽しむために必要なのだ。ネアカで上品な人は、未来の遊びのための準備それ自体を、現在の遊びにしちゃう。上品な人は道徳的な善悪なんてあまり重視しないから、けっこう平気で悪いとされていることもできるんだけど、下品な人は自分以外のところに価値を求めるしかないから、道徳的な善悪を重視しがちだ。だから、目標よりも過程そのものを大事にする人生が遊びである人は、あまり悪いことはしない、などなどと刺激的な対話が続き、哲学はこの世でいちばん楽しい遊びだなんて思わずうなってしまう。巻末の「哲学ごっこ」も楽しい。(野上暁)
産経新聞 1997/08/12
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