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今回は『子どものための美しい国』を紹介してみたい。 主人公はマック少年。マックは、亡き父王のあとを継いで王になり、子どもの立場から様々な改革を行っていく。国中の子どもにチョコレートを配ったり、田舎に子どもたちのためのキャンプ場を作ったり。政治面でも大人顔負けの活躍をする。近隣の国々を訪問して友好関係を確立したり、だれも恐れていこうとしなかったアフリカの国にいってそこの首長と大の親友になったり。しかし、大人の運営する国会とは別に子どもの国会を作った頃から、なんとなく歯車がうまくかみあわなくなりはじめ、ついに…… 子どものマックが大人を向こうにまわして大活躍する前半の楽しさと、子どもゆえの無邪気さからすべてが崩壊していく後半の虚しさがとても印象的だ。 子どもが自分たちの理想の国を作るという発想も、全体の構成も白土三平の『忍者武芸帳』の一挿話とよく似ているので興味のあるかたはぜひ読みくらべてみてほしい。 作者はポーランドの小児科医で、ワルシャワにあったユダヤ人の孤児院の院長もつとめていたが、第二次世界大戦のさなか、院の子どもたちといっしょにガス室に消えていった。それから四五年、コルチャックは日本でこの作品が出版されたのをどんな気持ちでながめているのだろう。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/06/12
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