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動物行動学の本によると、犬と人間の関わりの歴史は古く、ジャッカルの血を引く半家畜化された犬の骨が、ヨーロッパの旧石器時代の地層で見つかっているとか。人間の狩猟について歩き、やがて見張りや狩りの手伝いをはじめ、人間を「群れのリーダー」とし、互いの絆を深めていったようです。 興味深いのは、猫と犬をのぞくほとんどの動物が囚われて家畜となったのと異なり、犬と人間との結びつきは、おそらく両者の自発的意志に基づいて、なんの強制もなく成立したと思われること。だとすると、現代の犬がペットとして、飼い主とその家族に従い共に暮らすのも、犬にとってさほど無理がないのかもしれません。今回は、犬が大切な家族の一員になっていく過程を描いた本をご紹介します。 『こいぬのジヨリーとあそぼうよ』では、もらわれてきたばかりの子犬ジョリーの視点で描かれます。小さな子が犬をはじめて触るときは、とても怖がるものですが、犬の方だって同じで「ぼくのこと、かわいがってくれるかな」とドキドキ。ほかの犬がたくさんいる広場に出かけても「ぼくがすきだっていうにおいがしたら、うれしくて、しっぽがひとりでにぱたぱたしちゃう」。ジョリーにとって見るものすべてが新しく興味しんしん。そのうち友だちができ、どんどんやんちゃになり、楽しく季節が過ぎていきます。スイスの自然を舞台にしたこの素朴な絵本は、二人の八十代のおばあさんによって描かれました。 『こいぬ、こいぬ、わたしのこいぬ』では、飼い主の女の子の気持ちが率直に描かれます。犬が大好きで、部屋じゅう犬グッズでいっぱいのアンナ。足りないのは本物の犬だけ。やがて願いがかない、かわいい子犬が家にやってきますが、犬はおもちゃとちがって思いどおりにはなりません。あまりのいたずらぶりに、とうとう「こんないぬ、だいっきらい」と怒りが爆発。でもいつしか、アンナが自分から子犬を家族として迎え入れていく姿に、心が温かくふっくらと満たされます。 家族の一員になるといえば、『妹になるんだワン!』は、もっと強烈! 新しい家にひきとられた子犬のアリーシャは、皆からとてもかわいがられますが、アリーシャはひそかに「人間の女の子になる」という、びっくり変身計画をたてるのです。でも、人間になるのは思っていたよりずっと大変で…? この奇想天外なお話が生まれたのは、作者ヒントンが息子から、「ねえ、ママ。ウチの犬、いつになったら人間になるの?」と聞かれたのがきっかけだとか。お話の最後には、思わず誰かに話したくなること間違いなしのオドロキが待っています! ところで、私以外の編集部員は実はみんな猫派。みなさんは、犬派、それとも? 『こいぬのジヨリーとあそぼうよ』ダーリ・メッツガー文/マーガレット・シュトループ絵/齋藤尚子訳 『こいぬ、こいぬ、わたしのこいぬ』キャサリン&ローレンス・アンホルト作・絵/なかがわちひろ訳 『妹になるんだワン!」スーザン・E・ヒントン作/こだまともこ訳/高橋由為子絵 テキストファイル化富田真珠子 |
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