殺しのフロッピイ・ディスク

I・ドロッズ

長谷川たかこ訳 金の星社

           
         
         
         
         
         
         
    
 これもおもしろい、よくできたジュニア・ミステリーです。
 しかもフランス製。ダントツ酒落てます。
 確かに酒落てるってことになると、イギリスもアメリカもドイツも、フランスにはかないません。
 そのお酒落さかげんがときとしてわかりにくかったリ独りよがリになりやすいのもフランスものですが、これはほどほどで、読みやすいです。
 あとフランスものは大人と子どものあいだにあまり差がないのが特徴ですが、これも主人公の少年の兄貴はまだ二十歳なのにメジャーなFM放送局の創設者にしてディスク・ジョッキーです。大学生なのによ。
 これはその兄貴に頼まれてパリ中のパソコンショップにレポーターとして行き、偶然〃エドメ・ビルキェ殺人予定〃が入っているフロッピーディスクを手に入れたレミ少年十二歳が、兄貴の放送局を使ってそのエドメ・ビルキエを捜し出し(おまけに彼女はとっても若くてきれいで有能な看護婦さんだったのね)、そんなの、ただのパソコン・ゲームだ、という大人たちを向こうにまわして彼女を助けようとします。正確に言えば、彼女の美ぼうにまいった兄貴もきちんとボディガードして助けるんだけどね。
 小学生相手のミステリーじゃ、国際スパイ組織を使うわけにもいかず(「目撃者」みたいに子どもが巻きこまれることはあるけど、それを書いたら大人の本だよね)、ジュニア・ミステリーはとてもむずかしいジャンルです。
 学校の先生に対して〃きみ〃という翻訳はどうかと思いますが、ほかはこなれていて上手です。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ子どもの本案内』(リブリオ出版 1996/07)