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これはラィナー・チムニクが二十三歳の時に書いた、初めての作品です。絶句もんだよ。これを!? 二十三歳で書いた!? こいつはとんでもね〜天才だ! というのがありありとわかる凄い本です。 やっぱりまだ若いだけあってね、優しいの。 ふつうだったら、まだ青いぜ、といわれそうなとこが、青いんじゃなくて、若くて柔らかくてみずみずしいの! ストーリーは、芸をするクマと、クマつかいのおじさんの話です。 このクマは首に鉄の輪っかをはめられていて、踊ることも決して好きなわけじゃなかったけど、世界中で何よリも、このクマおじさんを愛してたの。行く先々で自分たちを見にくる子どもたちもね。 だからこのクマは、森へ帰りたい誘惑も自由も何もかも我慢して、クマおじさんのためにお金を稼ぎ、夜はたき火のそばでおじさんの語る声を聞き、ハーモニカに耳を傾けるのを至福としてたんです。 そうしてこのストーリーのあちこちに、金にとりっかれた連中や、下品さや、たちの悪い俗っぽさ(俗っぽさにもいいのもあるからね)に対する悲しみがからんでくるんだけどね、それがちっとも不自然じゃないんだ。上手なの。で、ある朝おじさんは冷たくなってて、ようやくもういいんだ、と悟ったクマは、頭を高く上げて森に帰っていくんです。 一度福武文庫に入りましたが……やっぱり偕成社のハードカバーがいいなあ。チムニクのさし絵がまた……いいんです。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14) |
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