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![]() 山に登って雲海を見る時、そして飛行機に乗って、雲の遥か上を飛んでいる時、雲の見せてくれる色々な表情に驚かされ、感動すらします。子どもの頃、雲に乗ってみたい、乗れると信じていた自分のことを思い出したり…。今でも、本当に乗ってみたいという気になってきます。 さて、「くものこどもたち」を初めて見たとき、その明るい表紙にまず、ひきつけられました。かげりのない、自然であたたかな空の青。日の光に輝く雲、そしてその上でとびはねる子ども達。様々な想いがこみ上げてきました。そして、一ぺージ、一ページ、ゆっくりと見て、文章を読むうちに、自分もくものこどもたちと一緒に雲に乗っているような、そんな錯覚にさえ捕われました。……本を閉じたくない、久しぶりにそんな気持ちになりました。 雲の写真、山の写真と、子ども達のコラージュ。なんとも見事な出来映えです。絵がいいだけではありません。お話もとてもじーんと心にのこります。訳もいい。冒頭で、主人公の男の子が、崖から落ちてしまいます。ショッキングな出だしです。悲しむ両親。でも、男の子は運良く、くものこどもたちに助けてもらい、そして、楽しい日々をすごします。雲に乗って、競争したり、飛行機雲を歩いて、友だちの所に行ったり。そう、おうちに帰りたくなるまで…。 人間への愛晴、けがれのない魂への憧憬、そして、大自然への讃歌、と言ってしまえば、なんとも陳腐に聞こえますが、一冊の絵本で、みじんの嫌みも、てらいもなく、ここまで表現できるバーニンガムの手腕に拍手を送りたいと思います。 嬉しいとき、寂しいとき、絵だけ眺めていてもよし、文章を読んでもよし、そんな絵本です。(米田佳代子)
徳間書店 子どもの本だより「絵本っておもしろい」1998/09,10
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