クリスマスの猫

ロバー卜・ウェス卜ール作 ジョン・ロレンス画
坂崎麻子訳 徳間書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 一九四三年のクリスマスを、キャロラインは牧師のおじさんのもとで過ごすことになった。おじさんは優しいが気弱で、性悪な家政婦の言いなりになっていた。家政婦から外出を禁じられ、友といえば身重の猫だけで、退屈していた彼女のもとにへボビーという少年が現れ、彼女を町に連れ出した。上流階級育ちの彼女は不況に喘ぐ労働者階級の因窮ぶりを知る。その後も家政婦の目を盗んで、牧師館の馬屋でボビーたちと会っていたが、クリスマスイブの日、見つかってしまう。
 六十年前の体験を孫娘に聞かせるという形で物語は進行する。それは今では夫であるボビーとの出会いの物語でもある。当時のイギリスの階級社会を鮮明に描き分けながら、小気味よく物語が展開している。
 ラストシーンは秀逸である。(喜多由美子)
『子どもの本-新聞書評から7』(子どもの本書評研究 1996)