黒いお姫さま−ドイツの昔話

ヴィルヘルム・ブッシュ:採話
上田夏而子:編/訳 佐々木マキ:絵 福音館書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    
    
 ドイツの昔話といえばグリム童話が有名です。本書は「マックスとモーリツ」の愉快な絵本で知られるブッシュが北ドイツで百四十年ほど前、まだ残っていた語り手から直接聞いた話を書きとめたものです。
 表題の「黒いお姫さま」は姫が死ぬと同時にまっ黒になってしまいます。この姫のひつぎを教会に安置し、番人をつけます。毎晩ま夜中になるとひつぎから出てきた姫が番人を殺します。不気味でこわい話です。
 最後の十一話「魔法にかけられたお城」でも黒い不気味な男と、黒いお姫さまが出てきます。たいそうがまん強い狩人の働きでのろいがとかれます。
 不気味な話の間にある九つの話の中には、おとなが読めばチクリと刺され、クスリと笑ってしまうもの、起こりえないけれどもありそうな話など、おもしろい話がバランスよくとりあげられています。
 グリム兄弟は昔話を通してドイツ人としての自覚をうながそうとしましたが、ブッシュは人間の、不思議を信じる心を大切にして昔話を採話したようです。お話にピッタリのさし絵が楽しさを増します。(亮)=静岡子どもの本を読む会
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