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歴史に興味のある子はもちろん、歴史が苦手な子も、ぜひ読んでみて下さい。 激しく揺れ動く、幕末の京都が舞台です。歴史の波に、いやおうなく巻き込まれつつも、たくましく生きる子供の世界を描いた創作短編集です。地味な装丁で取っ付きにくいかもしれませんが、いったん読み始めれば、グイグイと作品の世界に引き込まれるでしょう。 「寺田屋」「坂本竜馬」「新撰組」など、教科書でおなじみの言葉が随所に登場し、話が興味深く展開します。それも、庶民や子供の側から見たかかわりの中で描かれているので、新鮮な視点で奥深く歴史をとらえています。 祇園祭の鉾(ほこ)車造りに、初めて加わらせてもらった記念にと、自分の名前を「さんちき」と間違えながらも、ひそかに彫りつける車大工の弟子・三吉。知らないままに、暗号入りのオケを長州藩に届けるはめになったオケ屋の小僧・太吉。「人を殺すより、人を生かす医者になりたい」と逃げて来た武士をかくまう寺田屋の女中・りつ……。 どの主人公も、魅力的です。また、主人公とかかわる大人(武士も含めて)の人間模様の描写も、心憎いばかりです。そして、だれが天下を取ろうと、営々と途切れることなく、あきらめないで、毎日の暮らしを守っている庶民こそ本当は強いのだと、語り掛けてくれます。
(け)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化岡田和子 |
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