ジークII

斉藤洋作/小澤摩純絵
偕成社2001・一二〇〇円

           
         
         
         
         
         
         
    
 オオカミ猟師の息子として育てられたジークは、実は海をはさんで対立する二つの国、ジルバニアとゴルドニアの王家の血筋をひくものであった。
 両国の不和をふくめて諸悪の根源は、アーギス島に棲む大魔アーギスであった。ジークが仲間とともにきびしい試練をのりこえてこれを倒したのが『ジーク』第一巻で、本書は、和解した両国がまた新たな困難に直面したところから始まる。

 ジルバニアとゴルドニアが平和条約のみならず同盟条約を結んで間もなく、ゴルドニアがブラウニアという国から侵略されてしまったのだ。(国の名前がややこしいと思われる向きは、金、銀、銅と理解せられよ!)

 ジークは、同盟国の王子として大船団を率いて、父の国へ救援に向かう。海戦あり、上陸戦あり、ゾウを押し立てて攻めてくる敵軍の包囲網からの脱出あり、変装して検問をぬける際の「勧進帳」ありと、手に汗にぎるおもしろさ! クライマックスは竜を操り、竜巻と稲妻を思いどおりに動かすブラウニアの女王との対決だ。

 だが、一、二巻の構成が同一パターンになってしまっているのが気にはなる。前半の長い試練篇にくらべて、最後のたたかいがひどくあっけないのだ。「魔力」の妖しさ、恐ろしさも、物理的な破壊力をこえていないので物足りない。ジークとともに物語自体も成長されんことを!(斎藤次郎)
産経新聞2001.03.20