|
この物語は、映画をもとに、アメリカとカナダで出版されたとある。読んでみるとなるほど映像的なものだと納得する。しかし、物語として出版されてみると、この話の魅力と含意がよくわかる。 パウエル夫妻の息子ジャックは、わずか二カ月で誕生してしまう。つまり、ふつうの人間の四倍の速さで成長するのだ。だから、十歳の小学生のとき、外見も身体の内部も四十歳になっている。はじめ、いじめを恐れた母親のカレンは家庭教師をつけて家で学ばせ、小学校には通学させていないが、家庭教師の強い助言で通学を認める。 外見はおやじのような同級生に最初はとまどった級友たちも彼に慣れていっしょに行動するようになって、双方がすっかり満足する。 問題もある。ジャックは若い女の先生に恋する。子どもにはよくあることだから、先生はなんとも思わないのだが、ジャックは身体的には四十歳だから、もろに影響が出て入院とあいなる。 だが、体は大人で心は子どもという存在は、「よい友だち」になれる方法を知っていて、クラスメートに深い感動を与える。ジャックは、星たちに囲まれた流れ星のように輝くのである。 どこかに悲哀を秘めたおもしろい話として楽しめるが、非常に重いテーマを含んでいる。周囲と外見が違うことが、そして「よい友だち」をつくれるということが何を意味するか。本にした理由がよくわかる。(神宮輝夫)
産経新聞 1997/
|
|