ジャズ・オブ・パラダイス

後藤雅洋

JICC出版局 1988


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 ジャズについて好き嫌いをいうなら広範囲にわたるレコードを最低一〇〇枚きいてからいえ、歌謡曲やクラシックと同じレベルでジャズを評価するな、と、かなり激しい口調ではじまるモダン・ジャズの入門書がでた。
 音楽くらい好きなものをきかせてよ、という反論ももっともだが、自分の好みのものしかきいていないと、結局食わず嫌いで終わってしまうというのもほんとうだ。好きであろうが嫌いであろうが、しゃにむにつっこんでみるというのもいいのではないだろうか。
 この本はチャーリー・パーカーを中心にモダン・ジャズを語っている部分が約半分とアルバム三〇三枚を紹介している部分が半分という構成になっている。アルバムのセレクトもいいし、作者の熱っぽい語りに耳をかたむければ、どんなジャズ嫌いでも、ちょっときいてみようかしらという気になるにちがいない。
 「大部分のミュージシャンがリズムに対してBパウ、パウ、パウCという感じで乗っていくのに対し、パーカーは独自のタンギングの組み合わせによって、Bウパ、ウパ、ウパCという具合にウラから乗っていく。これが……
一分間に四分音符いくつ、という学校で習ったスピードとは関係なく、聴き手の意識にたたみ込んでいくような異様なスリルとスピード感を与えるのだ」というあたり、なんとも的確ではありませんか。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/10/09