ジュニア・ブラウンの惑星

ヴァージニア・八ミル卜ン
掛川恭子・訳
岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 〃ここは〈惑星〉、ここで一番大事なことは、自力で生きるってことだ。おれはお前にそれを教えてやるし、おれの助けがいるあいだは面倒をみてやる-おれは、明日のビリーだ〃
 くーっ、 かあっこいい! とおもわず思っちゃったけどさ、でもホントはそれほど甘っちょろいもんじゃないのよね。
 〃幼くて無力だということがどんなに危険なこと〃かわからないという大都会・ニューヨークで、親や家のない子どもたちが集まって暮らしている、そこが〈惑星〉です。〈惑星〉はいくつもあって、そこには一人ずつ〃明日のビリー〃がいる。でも一緒に暮らすのではなく、それぞれのビリーは夜やってきて、子どもたちに生きのびかたを教え、着させ、食べさせ、そうして各自独立できるようになったら(一グループ仕上げたら)、送り出す、というわけです。
 『ジュニア・ブラウンの惑星』の主人公・バディーも、昔助けられ、今は〃明日のビリー〃をやっている少年です。
 うー、うらやましい、と思うでしよ? だってそういうとこでスーパーマンも気どらず、ヒトラーにもならずにいるっていうことは、かなり難しい、力のいることだもんね。
 今の日本にだって、山ほどの〈惑星〉や〃明日のビリー〃が必要だよ! いまビリーをやらされている人や、ビリーが欲しい、と思っている人にはぜひ読んでほしい〃物語〃です。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1988/10/16