砂漠の宝

ジクリト・ホイク:作、絵
酒寄 進一:訳 福武書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 湾岸戦争で注目された中東やパレスチナから西へ、スエズ運河を渡ると、広大なサハラ砂漠を分け会って、いくつもの国があります。やはりイスラム教の世界です。人々はサハラ砂漠の周辺のわずかな緑地やオアシスの周りに町や村を作り、ひしめきあうように暮らしています。そして今も、何頭かのラクダを仕立てた隊商が、砂漠を越えて荷を運ぶ生活をしています。所々にある井戸を命の綱に、砂あらしを避けながら。
 この物語は隊商に初めて加わった少年アブリの旅をたて糸に、道連れの語り部スレイマンが語る。
 少年サイードの宝探しの旅を横糸に書かれた、アラブ民族に伝わる絨毯(じゅうたん)の模様にも似た、不思議な冒険物語です。
 アブリやサイードの旅は、何だか遠い昔の話のような気がしますが、自動車が走りラジオが鳴り、実は現代の話なのだと気づくと、そこに今の世界の様々な問題が、隠し絵として織りこまれているのを感じます。
 謎(なぞ)の宝は何か?市場のにぎわい、風の音が聞こえる物語り。
 (和)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化山本京子