サイテーな あいつ

花形みつる 講談社 1999

           
         
         
         
         
         
         
     
 子ども同士の会話ややり取りを見ていると、ハラハラするくらい荒っぽくて暴力的だ。この作家は、そんな彼らの日常的な言語感覚や行動スタイルを鮮やかに掬い上げて、バイタリティー溢れる子ども像を描き出すことが巧みである。
 この作品でも、のっけから主人公のカオルちゃんの、「ったくもー、サイテー!」っていう呟きから始まる。新学期最初の席替えで、みんなから嫌われ者のソメヤの隣になってしまったのだ。泣き虫で幼稚で汚くて、机の上に鼻糞を擦り付けるし、テストの答えは覗き見するし、カオルちゃんはストレスでマジキレ状態。ソメヤの方は、カオルちゃんに「おまえは怪人か!」なんて言われながらも、彼女に好意を抱いているから厄介。
 物語は、そんな二人のモノローグで展開していく。カオルちゃんがおたふく風邪で休んでいる間に、ソメヤの一言から二人はラブラブだとされ、カオルちゃんはクラスで孤立する。バスケットの試合でチーム分けをすると二人だけはみ出すが、そこからの展開が爽快だ。彼女はソメヤとつるんで、他のチームを圧倒してしまうのだ。
 両親から疎んじられて、伊豆河津の祖母の所に行ってしまったカオルちゃんを、ソメヤが一人で訪ねて行くシーンは泣かせる。小学四年生の少年と少女のちょっと変わった交流を、しなやかに描き出して感動的である。 (野上 暁)
産経新聞2000/01/11