三びきのコブタのほんとうの話

ジョン・シェスカ・文 レイン・スミス・絵
いくしま・さちこ・訳 岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 「三びきのコブタ」といえばヨーロッパの昔話のなかでもポピュラーな話のひとつ。それにしても、オオカミといえば必ず悪役というのが昔話の世界では常識のようなもの。
 そんなオオカミに同情派の作者が「違う言い分もあるんだよ」と書いたのがこの絵本。
 この本のオオカミはおばあちゃんの誕生日に手作りケーキをプレゼントしようという心優しい「善人」で、逆にブタはオオカミが砂糖を借りに行っても貸してくれない、けちで意地悪で礼儀知らず。
 カゼをひいたオオカミのくしゃみでワラの家はバラバラ、それでブタは死んでしまう。死んだブタはまるまる太っている。オオカミは目の前にとびきりのモモ肉があったから、食べただけ― これが真相だというのです。
 今までの筋書きを180度逆転する発想も面白いし、最初のページからすっとぼけたひょうひょうとしたオオカミ、意地悪な表情のブタが登場、ひょうきんな語り口はとても愉快です。
 画面に仕掛けられたウイットに満ちた遊びの面白さ、誇張して報道することもあるマスコミへの皮肉もチラリ。おとなも子どもも楽しめる絵本です。
 (安)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化塩野裕子