史上最強のシネマバイブル

主婦と生活社


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 今回の本はこういった欄で紹介するにはちょっと古い。のだが、それを承知で紹介してしまおうと思う。
 先日、文春文庫の『洋画ベスト一五〇』と『日本映画ベスト一五〇』をめくって驚いてしまった。いわゆるマニアらしき人々が選んだらしいのだが、上位には往年の名画ばかりがぞろぞろ並び、そのまま文部省推薦、よい子の映画観賞リストになっているのだ。
 これをみて、『史上最強のシネマバイブル』を今まで紹介しなかったのが悔やまれて悔やまれてならなった。考えるに、これはすごい本だったのだ。一万人以上の人からのアンケートをもとに洋画、邦画とりまぜて二千本の映画を名場面スチールとともに紹介したもので、ちなみに一位から順に『ローマの休日』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ウエスト・サイド物語』『E・T.』『トップガン』『風の谷のナウシカ』といった調子。
 各映画にそえられている「声」も楽しい。『二〇〇一年宇宙の旅』にはこんな声がよせられている。「わー、ハデだハデだ、ハデな色だーと思って、なんだかわからないうちに終わってしまった」「お猿さんが骨ふりあげて……投げあげて……宇宙船になって……スゴイ!」「『テアトル東京』の湾曲スクリーン。床面スピーカーに包まれて見た迫力。キューブリックの頭脳、感性にすっかり洗脳されて満足」
 紹介が遅くなったのを反省しつつ、ここに推薦いたします。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1989/07/16