信ぜざる者コブナント
1・2-破滅の種子 上・下

ステファン・ドナルドソン著
小野章訳 評論社

           
         
         
         
         
         
         
     
 ファンタジーのなかでも一番大変そう…なのが、この『信ぜざる者コブナント-破滅の種子」-なにせ上下二段組みの分厚い本が六冊……なのにこれはまだ第一部……なんだそうです。
 主人公はハンセン病にかかった中年男……今はハンセン病はうつらないし自宅で暮らせる病気ですが、退院してみたら息子を連れて妻は逃げたあと、おまけに頼みもしないのに、誰かが玄関に食料を置いていく、ガス代や水道料金もいつのまにか誰かが払ってる……つまリ、町へ出てくるな!ってことなのよね。
 カッとした彼は町へ行き、倒れて頭をぶっけたはずみに別世界へ行ってしまいます。そこでは彼は銀の指輪をはめた救世主で、もちろんハンセン病でもなくて、友人も親友もいっぱいできる……そうして当然のことながら敵も味方もいる世界で、メシアとして期待されてるのに、彼は断固として戦わない!もしここで戦ったら、オレは現実の世界で妄想にとりつかれたことになリ、精神病院行きだ、と彼はかたくなに信じて動かない……。
 なんと、その分厚い六冊分、えんえんと-。
 そのあいだになかよくなった人々が次から次に殺されていくのにそれでも彼は動かないので、読んでるこっちはもうホントにイライラしますが、動かんものは動かない!
 でも、やっぱりこれもラストにくると、得心する。そうして、これを読んだあとに『指輪物語』をながめると……〃指輪〃の時代は終わった……としみじみ思ってしまったしだいです。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)