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F・ル・リヨネの『何だ、この数は?』をはじめ、高校生から一般までを対象にした数学の本が東京図書から何冊かでている。どれもそれぞれに作者の主張がはっきりしていて、学習参考書とはまったく違った数学の世界が広がっている。このシリーズのなかに森毅の『指数・対数のはなし』がある。高校の頃に指数で大いに悩まされた自分としては、これがとても新鮮で楽しかった。中学校で算数優等生だった自分がなぜ指数でコケてしまったか、この本を読みながら考えるに、それは、指数の世界が日常世界の感覚とあまりにかけはなれているからだったのだ。そう、花子さんはお母さんからリンゴを三つもらって……といった世界ではなかったからなのだ。そしてこの本を読んでさらにわかったことは、「自然は指数的なのだが、(人間は)それを加法感覚で錯覚しながら暮らして」いて、このギャップを埋めることはとても重要だし、とても楽しいということだった。 この本は指数・対数のごく初歩から大学の理工系の基礎課程までがわかりやすく解説されたとてもいい本です。 朝日選書からでている『数の現象学』(九〇〇円)も森毅の好著で、これは人間が数学的な問題をどのようにして理解しているか、あるいは理解してきたかということについての本であり、数学ってなんだろうという根源的な問題に迫る傑作である。むつかしいところもあるが、全部理解する必要はない。軽い気持ちでちょっと手に取ってみてほしい。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席89/10/22
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