水族館のわき役たち

寺本賢一郎

研成社


           
         
         
         
         
         
         
     
 えっ、ホタテガイに目がある?
 そんなばかな、と思った人は本屋にいってこの本を買いなさい。この本というのは『水族館のわき役たち』。とにかく楽しい本です。
 ホタテガイの目についてはこんな説明があります。「薄くあけた殻の内側、外とう膜の縁に沿って細かいひげのような触手がたくさんあり、その間に直径一ミリほどの黒い小さな目が並んでいる。上側(左殻)に五〇個ほど、下側(右殻)に二、三〇個ほどある。個々の目には角膜もレンズも網膜もあり、せきつい動物、イカ、タコ類につぐ非常に発達した構造だといわれている」んだそうであります。
 この本の主人公はタコ、イカ、イソギンチャク、ヤドカリといったありふれた連中なのですが、その体の仕組みや生態のユニークなこと。もう神秘と不思議の連続なのであります。
 そのほかに、餌づけ、水槽のそうじ、水族館の展示にむいた生き物とむかない生き物のちがい、水族館のかくれた役割(自然保護など)といった、わりと知られていない側面もていねいに解説してくれています。動物園派も水族館派も、原発反対派も、とにかく「生きる」ことに興味のある人にはぜひ読んでいただきたい一冊です。 それから岩波ジュニア新書の『水族館は海への扉』もいい本です。あわせておすすめいたします。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席900318