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昔むかし、『メリー・メリーを追いかけて』というとても奇妙な物語がありました。まだ日本が昭和の三十年代を引きずっていた時代にこの一冊だけがとびぬけて都会的で新しく、カッコよかったんです。喫茶店でオムライスかなんか、子どもたちだけで注文して食べるシーンがあったりしてさ。 今では当たり前のことが当時は凄〜い、だったんだよ。 それを考えると、やっぱり今のコギャルたちって本人はイキがってるつもりでも、本当は相当ムリしてんだろうねえ、やっぱり。 というわけで、この本はその時それを読んで驚愕した女の子たちから、今でも探してほしい、という依頼がよくきます。 特にストーリーらしきものはないのに、雰囲気だけ(と小道具ね)で読ませる本だった。 その作者が(ものすごく寡作なのよ)何年後かにまたポツリと出したのがこの『透きとおった季節』-。思春期まっただなかの女の子と、お母さんとの葛藤の話なんですが、みごとなくらい、全編男の影がない! 女の子と、デザイナーだかオートクチュールだかのお母さんとおばあちゃんとおばさんたちしか出てこなかった……と思う。 でも女しかいない、ということは男に頼ったり甘ったれたりできない、逃げ道がない……問題をつきつけられる、ということで、真正面から自分とむきあわなきゃならなくなる、という利点があります。不安定で自分でもどうしてかよくわからない、あのもやもやした年代を、かなリ上手に描いてました。今の子には古いかもしれないですが、大人にはいいでしょう。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14) |
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