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これは画期的な作品です。一九三二年、まだヨーロッパが自分の国を守るために相手を攻撃するのは正しいことだと信じていた時に、ポーランド人の十四歳の少年、ヤン・クビツキがドイツ軍に拾われ、数々の手柄をたてたのに自分がしていることは大量殺人のお先棒かつぎだ、ということに気がつき、軍隊から消えてしまうというストーリーだからです。 ようするに、戦うことそれ自体が悪なんだって発想はなかった……。 これは一九三三年、ナチスによって焚書にあい、つまり発禁本になり、少年と同じく〃消えて〃しまったのです。 それが一九八二年にドイツで復刊され、日本でも八五年に翻訳されてあリがたいことに私たちも読めるようになった、というわけです。 うん、凄いよ。全然古くないの。 でも表紙は子どもっぽすぎるから……大人たちに読んで、とはいいにくい。 出版社さん! 出してくれるのはありがたいですが、もう少し、外見のことも考えてください。読者の手に届かなくなっちゃうよ! たった十四年しか生きていないのに、戦場にいるうちにこれはまちがいだ、ということに気がつき、信念にまでなり、そうしてそのとおり行動できるたいていの大人はそれがてきないのに…。 その十四年間、彼は愛され、慈しまれ、だから世界を愛する力を身につけていたんだと思うと、そうされずに日々壊されていく今の日本の子どもたちのことをつい考えてしまいます。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14) |
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